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分野別カテゴリー: まちづくり 国際交流 教育

2024.12.11

レポート:世界でひとつ、地域の宝 〜 川上小学校・棒踊り体験授業 〜

 ―下花棚棒踊り保存会への取材を通して―

 

棒踊りは鹿児島県内各地に古くから伝わる、郷土芸能のひとつです。

各地域の棒踊り保存会では、地区ごとに異なる踊りや衣装で独自の文化を継承してきました。

 

このたび鹿児島市の川上小学校で、校区内にある3つの棒踊り保存会による体験授業が行われました。

こちらでは、当日の様子を取材したレポートをお届けします。

 

 

棒踊りを子どもたちが体験!

 

11月9日(土)、川上小学校4年生の「総合学習」の時間を訪ねました。

この日、川上小の体育館には下花棚春山川上の3つの保存会メンバーが集合し、児童の皆さんへ棒踊りの説明踊りの披露を行いました。

 

子どもたちは普段から授業で郷土芸能について学んでいるそうで、担任の先生によると、この日をとても楽しみにしていたとのこと。

中には、棒踊りに使うカマの刃について「切れたりしないの?」と疑問を投げかける児童もいたようです。

 

下花棚保存会からの説明では、まずはじめに棒踊りの歴史や目的、踊りについてのお話がありました。

その中では、棒踊りが五穀豊穣の祈願や薩摩に伝わる示現流にルーツを持つということ、

年を追うごとに担い手が不足してきているので、興味を持ったらぜひ皆さんもメンバーになってほしい、

との呼びかけがありました。

 

 

 

 

続いては、踊りの披露です。

歌い手の歌に合わせて、いくつもの異なる踊りを見せてくれた保存会の皆さん。

ダイナミックな動きに、子どもたちも釘付けです!

 

 

 

▶こちらで〈動画〉も視聴できます!

 

 

その後は、保存会メンバーに教わりながら、実際に子どもたちが棒踊りの動きを体験しました。

棒(ぼう)や鎌(かま)、薙刀(なぎなた)を手にしてお互いに打ち合ったり、足踏みを習ったりした子どもたち。

元気いっぱいの声と笑顔があふれます。

 

 

 

 

「体験してみてどうですか?」と尋ねると、

子どもたちからは「道具が思ったよりも重い!」「手の動きが難しい〜」など、たくさんの感想が出ていました。

体験前に「切れないのかな?」との声が挙がっていたというカマの刃については、刃が錆びたものを使っていることが分かり、「これだったら切れないね!」と納得したようです。

子どもたちの楽しそうな様子に、保存会の方たちにも笑みがこぼれます。

 

 

 

 

最後に3つの保存会の皆さんから、棒踊りへの思い、そして子どもたちへのメッセージが語られました。

 

 

 

 

「棒踊りは五穀豊穣を願ってのお祭りです。それを大切に、川上校区ではこれまでずっと棒踊りを続けてきました。踊り子や歌い手は少なくなってきているけれど、なくしたらいけないと思っています」

 

「地域の町内会を中心に、今までつないできた文化を絶やしたくないという思いがあります。自分の生まれ育った町に棒踊りという地域の宝があることを、記憶として残していきたい。棒踊りがあることが、地域の人たちの大きな絆にもなっています」

 

「サッカーや野球などは他の地域でも見ることができますが、川上の棒踊りは世界でここにしかないものです。皆さんが大人になって世界に飛び出していく時に、川上で棒踊りをやったということを思い出してほしい。今日のこの機会を通して少しでも棒踊りに興味を持ったら、ぜひ保存会に来てください。待っています」

 

 

 

地域の宝をつなぐために

 

体験授業の合間には、下花棚保存会代表・泊純弘さんにお話を聞くことができました。

下花棚保存会は現在、25名で活動をしているそうです。

2002年は37名いたとのことで、メンバーは減少しています。

ほかの保存会もそうですが、高齢化などによる担い手不足が課題となっています。

 

そんな中、今年は川上小の児童2名が加入し、現在4人の小学生が参加しています。

また、インドネシアからの実習生2名も加入。棒踊りの練習や行事に参加しているそうです。

泊さんによれば、「彼らは真面目で一生懸命。仕事の給料から故郷の家族に仕送りもしていてとても感心する」とのこと。

保存会メンバーの皆さんも、棒踊りのことだけではなく日常会話など、彼らといろいろな話をしてコミュニケーションを取っているそうです。

 

泊さんは言います。

「棒踊り保存会のメンバーは、すばらしい仲間

一時はこのまま保存会がなくなってしまうんじゃないかと思った時もありました。

今、若いメンバーが説明会用のスライドを作ってくれたり、それぞれが役割を持って動いてくれています。

皆がいるから続けられる。触れ合うこと気持ちをひとつにすることを大切に、時代に合ったやり方でつないでいきたいですね」

 

 


 

 

 

今回の取材を通して、伝統芸能に実際に「触れる」「体験する」ことの重要性を感じました。

保存会代表の皆さんもお話されていましたが、地域の棒踊りは「世界に一つだけの宝物」

子どもたちだけでなく私たち大人も、もっと知る・触れる機会を持てたらと思います。

 

取材・記事:
かごしま文化情報センター
上野イクヨ