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2022.10.04

レポート:花尾神社【秋の大祭】3年ぶりに開催

鹿児島市の花尾神社では秋分の日にあわせ「花尾の太鼓祭り」「大平の獅子舞」「岩戸の疱瘡踊り」「西上の太鼓踊り」という4つの民俗芸能と時代行列「蟻の花尾詣で」が奉納され、秋の大祭として親しまれている。

かごしま文化情報センター(以下KCIC)は、2013年に関係者へのインタビュー取材と当日の様子をまとめた冊子を制作しているが、9年もの月日が経ち、我々は改めて2022年9月23日に会場へと足を運んだ。新型コロナウイルスにより「大平の獅子舞」と「岩戸の疱瘡踊り」の開催は見送られたものの、3年ぶりの開催は集う人々の高揚する気持ちに溢れていた。


まずは「花尾の太鼓祭り」に始まる。
旗を掲げる保存会の方を先頭に、鉦(かね)と太鼓が互いに呼応する。音に合わせた軽やかな跳躍により、矢旗の先端にあるカラフルな装飾がふわっと開く。放射状に花開く、この時期の彼岸花の輪郭とも重なる。武士に見立てた鉦打ちを、兵士と表される太鼓打ちが挟んで前進していく。大人が担ぐ高い矢旗の中でひときわ低い矢旗が目を引く。地元の小学生であり、鉦打ちの中には高校生も混じり、大人からこどもへ祭りの継承譜が見受けられた。

 

 

 

 

 

続いて「西上の太鼓踊り」へと続く。

東俣町西上で代々受け継がれてきた太鼓踊りで、他の太鼓踊りと同様に朝鮮の役や関ヶ原の合戦の際に兵士を激励するためにとされていたが、昭和初期に「五穀豊穣」「病害虫防除」祈願、そして同じ郡山にある一ノ宮神社「島津忠久主祭」奉納にも踊り継がれていた。

 

 

 

 

途中、太鼓踊りの横で「蟻の花尾詣で」が通過する。異なる芸能が交差し、現代では珍しい風景。彼らは鹿児島城跡から出発し、17,5キロを歩いて参道に入る。甲冑姿の武士や神輿に担がれた丹後局。「さつま日光」と呼ばれるほど美しい花尾神社の境内で、今年も無事参りましたよと参拝姿を確認できた。

 

 

 

 

*蟻の花尾詣で

 

今年の秋の大祭は踊りの編成、時間、人数と縮小したかたちではあったが、無事奉納を終え、安堵する演者たち。民俗学的に貴重な芸能と聞く「大平の獅子舞」、2018年から復活を遂げた「岩戸の疱瘡踊り」もまた揃ってみれる日を多くの人が心待ちにしていることであろう。

なお今回の撮影者は、KCICが主催するアートマネジメント講座の受講生である。講座の中で彼自身の企画対象が伝統芸能であり、人間は誰しも踊りたい、鳴らしたいというスピリットがあるとして年内に関連イベントを計画している。
KCICは今後も「地域文化の地産地消」を掲げ、様々な立場で伝統・民俗芸能に関心を持つ人が集う場を築いていきたい。

 

取材:かごしま文化情報センター(KCIC)

写真:Takashi Masunaga(2022年度アートマネジメント講座受講生)