実行委員会主催
レポート:音とあかりの散歩道2021
2021年10月30日(土)幻想的なあかりの中で音楽を楽しむイベント「音とあかりの散歩道」が2年ぶりに開催されました。
このイベントは、多くの市民に音楽や美術、伝統芸能など様々な文化に触れてもらう事により鹿児島の魅力を再発見したり、文化を通じた元気な地域づくり・人づくりを進めていくことを目的とした鹿児島市の「文化薫る地域の魅力づくりプラン」に基づいて企画されたものです。
今年は、新型コロナウイルス感染症対策を実施しながら、かごしま文化ゾーンにある照国公園会場、中央公民館会場、鹿児島市立美術館前庭会場の3会場で、多彩な音楽・伝統芸能のステージや幻想的なあかりの展示、ワークショップなどが行われました。
途中、あいにくの雨となり野外ステージが中断される場面もありましたが、来場者はそれぞれの会場のステージやあかり作品を楽しんでいました。
目次
◆照国公園会場
◆中央公民館会場
◆鹿児島市立美術館前庭会場
◆照国公園会場
【時間】15:00~20:30
【内容】音楽ステージ、あかりの演出
照国公園会場では、手作りによるあかりの演出の中、県内で活動する音楽団体のステージが披露されました。途中からの雨の影響で、残念ながら出演できなかった団体もありましたが、中断や休憩を挟みながら、出演予定の13組中7組の団体が出演し、コーラスやリコーダー演奏など多彩なステージを披露しました。
《かごしまジュニアコーラス》
小学生から高校生までの14名で活動している「かごしまジュニアコーラス」。
「パプリカ」や「茶碗蒸しのうた」などをダンスとともに披露し、明るく元気な歌声でオープニングを盛り上げました。
《リコーダー アンサンブルチェスト》
平成18年に結成した社会人リコーダー愛好家によるグループ「リコーダーアンサンブルチェスト」。
演奏の途中から雨が降り出しましたが、観客のみなさんはリコーダーの伸びやかな音色に最後まで魅了されました。
《市民参加型音楽劇 ソラウタ》
4歳から90歳代まで、幅広い世代のメンバーで構成された「市民参加型音楽劇ソラウタ」。雨で出演が危ぶまれましたが、子供たちの「歌いたい」という強い気持ちで出演することとなりました。始まる頃には沢山の観客で客席がいっぱいとなり、雨にも負けず全力で歌う姿に会場は感動的なムードに包まれていました。
《鹿児島玉龍中学校・高等学校合唱部》
「歌は力、歌は希望!」をモットーに、中学生と高校生が心をひとつに合唱を楽しんでいる「鹿児島玉龍中学校・高等学校合唱部」。
会場は、暗くなり雨も続いていましたが、灯り始めたあかりが創りだす幻想的な雰囲気の中、美しいハーモニーを響かせていました。
《Sparkle》
コロナ収束への祈りも込めて歌いたいと出演したゴスペルグループの「Sparkle」。
雨の心配も吹き飛ばす迫力ある歌声を披露しました。
《La Fontana》
歌が大好きなアマチュアの社会人サークル 女声アンサンブル「La Fontana」(ラ・フォンターナ)。
神秘的な歌声が、より一層、幻想的な雰囲気を盛り上げていました。
ゲスト出演
《鹿児島サクソフォン室内合奏団》
最後のステージを飾ったのは、鹿児島県在住のサクソフォンプレイヤーで組織される、サクソフォンによる室内合奏団「鹿児島サクソフォン室内合奏団」。
雨の中での楽器演奏は難しい為、ぎりぎりまで状況を見守っていましたが、奇跡的に雨が止み、出演することができました。
サクソフォンの一体感あふれる音色が会場を盛り上げ、観客らはトリを飾るにふさわしい圧巻のパフォーマンスに魅了されました。
開場入り口では、新型コロナウイルス感染症防止対策が実施されました。
来場者の願いが込められたメッセージで作る大きな灯ろうや、市内の学生が制作したあかりの作品などが、会場を華やかに彩っていました。
《出演予定だった団体》雨のため残念ながら出演がかないませんでした。
・ヨッシーアイランド
・ファンタジア
・coro-ne♪
・本田浩平
・鹿児島ウィンド アンサンブル
・Realdeal Music Orchestra
◆中央公民館会場 「TSUNAGU和のせかい~むすびゆく未来へ~」
【時間】15:00~17:00
【内容】邦楽・伝統芸能ステージ、あかりの演出
中央公民館会場では、「TSUNAGU和のせかい~むすびゆく未来へ~」というテーマのもと、日本各地に古くから伝わる伝統文化・伝統芸能を、それぞれの手法で伝承・継承している個人・団体が出演し、異文化の融合する素晴らしい「和のステージ」が創出されました。
TSUNAGU Ⅰ 古〜郷邑
《~天・空・地~ 雅楽》
「平調音取」「越天楽」
桜山舎中:鳳笙/櫻井 和利、龍笛/中別府 良啓、篳篥/山下 建
雅楽は、悠久の歴史を誇る世界最古の管弦楽といわれますが、当日は桜山舎中(主に鹿児島神社の祭礼において演奏している雅楽同好会の会員)のみなさんの三管(笙…天の音、龍笛…空の音、篳篥…地の音)奏楽で、古の音を奏でていただきました。
《~妙音~ 薩摩琵琶》
「金剛石」「春日野」
薩摩琵琶同好会:濱田 眞民、竹内 路美子、竹内 結、田中 拓哉、山下 剛
薩摩琵琶は鎌倉時代の初めに、薩摩の僧宝山検校が仏教の教えを広めるために始めた、盲僧琵琶が源流といわれます。その後、琵琶や弾奏法にいろいろと工夫が加えられ、薩摩武士の士風にあった勇壮な琵琶音楽として完成されました。今回、初めて薩摩琵琶に挑戦した竹内路美子・結さん(小学4年生)親子の初舞台に、観客席からは温かい激励の拍手が送られました。
《~郷の唄~ 民謡》
「鹿児島長持唄」「大隅籾摺り唄」「八代おざや節」「鹿児島小唄」「山川漁り節」
北辰会:唄/呉 采瞳、尺八/勝江清風 関 譲二、三味線/藤本香玄、太鼓/美波京愛華
故郷の生活と結びつき、生活の中から生まれ、古くから人々の心の中にあった日本の民謡。失われつつある鹿児島の民謡を歌い継ぐため、県内のイベントや公演会などに多数出演し、民謡の魅力を伝える活動を続ける呉 采瞳さんの真摯な歌声は、観客の心を強く打つものがありました。
《~郷の祭~ 民俗芸能》
「小山田太鼓踊り」
小山田町太鼓踊り保存会・小山田小学校児童
小山田太鼓踊り保存会の活動は約50年続いており、伝統文化を伝承していくために小山田小学校の5、6年生に練習の指導など行っています。今回のステージは保存会と小学生が初めて合同で踊りを披露しました。小学生は、「マスクを付けながら踊る練習は大変だった」と話していましたが、リズムよく鐘の音に合わせた軽快な踊りは、観客に元気を与えました。
TSUNAGU Ⅱ 古典~創造
《~和楽の笑~ 狂言》
「柑子」
吉野兵六狂言同好会:主人/網谷正美(狂言師) 太郎冠者/東畑光南
今年で活動10年目の「吉野兵六狂言同好会」は、高校3年生の東畑光南さんと師匠である狂言師の網谷正美さんの2人で「柑子」を演じました。東畑さんは小学2年生から狂言を習いはじめ、狂言の楽しさをより多くの人に広めたいと日々活動に力を入れています。「太郎冠者」の軽妙な話術と「主人」とのやり取りの芝居に観客の大きな笑いを誘っていました。
《~慈~ 日本舞踊》
「連獅子」
吾妻流典紀代会:親獅子/吾妻典紀代仔 仔獅子/倉山千穂
獅子の厳しい英才教育、父は子をけわしい谷底へ蹴落とすという演目「連獅子」を師匠と弟子で織りなす古典舞踊となりました。倉山さんは3歳から日本舞踊を習いはじめ、現在大学生となり、少ない練習時間の中、師匠と2人で演じあげました。親から子へ、師匠から弟子へと「つなぐ」姿を力強い舞で表現し、観客を魅了しました。
《~悠久の譜~ -福島雄次郎作品から-》
〈作品1 女声合唱〉
・南島歌遊びより「朝の祈り」「憩い」(その1版画)
・道の島唄より「慢女節」
合唱/Prunus・鹿児島女子高等学校音楽部 指揮/盛山春樹
〈作品2 邦楽四重奏曲〉
・尺八、箏2面、十七絃のための四重奏曲「霖雨」
箏/鹿児島県箏曲会(1箏 木元 歌由莉、2箏 坂元 歌媛、17絃 西薗 真理子) 尺八/福田 井山
〈作品3 わらべうた〉
児童合唱と邦楽器のための「鹿児島わらべうた」
箏/鹿児島県箏曲会・鹿児島女子高等学校箏曲部 尺八/福田 井山 合唱/Prunus・鹿児島女子高等学校音楽部
演奏指揮/盛山 春樹
鹿児島・奄美の民謡を取り入れ、多彩なジャンルでの活動を展開した鹿児島ゆかりの作曲家 福島雄次郎氏の作品で構成した合唱・筝・尺八総勢50名ほどの壮大で圧巻なステージとなりました。
鹿児島女子高等学校では数十年にわたり同じ作品を先輩から後輩へ歌い継がれており、今回の合同演奏でひとつの伝統と継承を肌で感じました。
市内の学生手作りのあかり作品も展示され中央公民館を彩りました。
◆鹿児島市立美術館前庭会場
【時間】17:00~20:30
【内容】あかりの演出、あかり制作ワークショップ
鹿児島市立美術館前庭会場では、松陽高等学校美術科、鹿児島玉龍中学校・高等学校美術部、鹿児島大学美術専修有志のみなさんが制作したあかり作品の展示や、あかり作品を制作するワークショップなどが行われました。
松陽高等学校美術科の皆さんは、江戸時代の浮世絵を現代版浮世絵にアレンジした灯ろう作品や和傘を制作しました。訪れた人は、温かい灯りが醸し出す幻想的な雰囲気を楽しんでいました。
会場中央には、鹿児島玉龍中学校・高等学校の美術部の皆さんが竹と和紙で制作した桜島のオブジェが展示され、写真撮影のスポットとして賑わっていました。
鹿児島大学美術専修有志の皆さんは、ハロウィンの魔除けやコロナを祓う意味も込めて星と光のあふれるハロウィンの街並みをイメージした作品を制作しました。
市内の学生の企画による手持ちの灯ろうを制作するワークショップでは、親子一緒に制作を楽しむ姿がみられ、参加した子供たちは完成した作品に笑顔を見せていました。
その他、会場の周辺には福祉団体やあいご会、町内会、市民の手作りの灯ろうが飾られ街ゆく人の目を楽しませていました。
市民参加型のイベントとして、「音とあかりの散歩道2021」の企画、運営には市内の学生が携わりました。
当日は、約950人が訪れた「音とあかりの散歩道2021」。
来場者からは、「毎年、楽しみにしていたけど昨年は中止になって残念でした。今日は非日常を楽しめました。」などの感想がきかれました。
コロナ禍で文化芸術に触れる機会が減る中、市民にとっては久しぶりに音楽や伝統芸能、美術などの文化を満喫できたイベントになったようです。